英雄の妻に転生しましたが、離縁されるようです ~旦那様、悪妻の私を愛さないでください~
 とにもかくにも、過剰に不安がる必要はないと思えた。明日の朝になれば、少しの話し合いを経て、すんなりと家に帰してもらえることだろう。

 そういえば、わたしがここにいることを自宅にいる父は把握しているのだろうか。

(……まぁいいか。お父さんにはちょっとくらい、心配させておこう)

 そんなふうに思いながら、先を行く少年との距離が開いたのを見て、慌てて足を動かした。

 こちらは慣れないハイヒールを履いているというのに、案内役の少年は足音ひとつ立てずに、するすると突き進んでいってしまう。「待って」と声をかけても無視されてしまい、必死で追いかけるしかなかった。

 あんなに年若い子どもが一人前に働いていることは驚きだが、階段のあたりで出くわしたおとなの使用人たちが、少年の顔を見るなりなぜか敬うように頭を下げ、道を空けたのも不思議だった。年齢の常識を飛び越えて、少年のほうが立場が上であるようだ。
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