英雄の妻に転生しましたが、離縁されるようです ~旦那様、悪妻の私を愛さないでください~
「グレイス殿はえらくご立腹で、絶対にふたりを別れさせると息巻いていた。それに独自に仕入れた情報によれば、君たちはいずれ離婚する予定らしいじゃないか」

 びくりと肩が震えた。これでは肯定したようなものだ。
 古株のメイドの誰かから聞いたのだろうか。口の軽さには困ったものだが、あらかた事実であるし口止めしているわけでもないから仕方がない。

「離婚したら、僕の元に来るといい。こんなにいい女を泣かせるなんて、ルシウスも案外、悪い男だな」

「違います、ルシウス様は……。は、離れてください! わたしになにかしたら……」

「なにかって、どんなことかな……?」

 危うい空気を感じて、全身が総毛立つ。
 思わせぶりな流し目が、じりじりと距離を狭めてくる。
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