英雄の妻に転生しましたが、離縁されるようです ~旦那様、悪妻の私を愛さないでください~
 啖呵を切ったものの、できることといえばぎゅっと瞼を閉じて、体を縮めることくらい。それでも、もしものときは不敬行為も辞さないと気持ちを奮い立たせていると、

「――リアム殿下」
 近くで低い声が響き、人同士がぶつかるような荒々しい物音がした。

 目を開くと、凛々しい黒髪が目に入った。ルシウス様だ。息を乱し駆けつけた彼が、殿下との間に体を割り込ませ、わたしを守ってくれている。
 広い背中の向こうから、リアム殿下の声だけが聞こえてきた。

「やぁ、ルシウス。素早いナイトのご到着だな。そう睨むなよ」

 ルシウス様の妨害もなんのその、茶髪の頭がひょいっと視界に入ってくる。おまけに憎らしくも様になるウインクを投げてきて、わたしはたじたじと身を引いた。
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