英雄の妻に転生しましたが、離縁されるようです ~旦那様、悪妻の私を愛さないでください~
 ルシウス様の声から満足感が感じられて、なによりも安堵した。わたしのほうこそ、めくるめく時間を彼と過ごすことができて、これ以上ないほど幸せだ。

 そっと手を添えた逞しい胸板から、トクントクンと規則的な鼓動が響いてくる。己の胸が立てる心音も、今はだいぶ落ち着いていた。

 これまで恥ずかしさが先に立ち、セクシャルなことに苦手意識すら持っていたのが嘘みたいに自然で、甘いご褒美のようにも感じられる。同時に今までの気苦労がどっと思い出されて、もどかしい気持ちにもなった。

 はじめから「離婚はしたくない」と正直に考えを打ち明けていれば、こんなにも遠回りせずに済んだのではないだろうか。
 夫婦円満のためには会話が大事だと、心に留めておこう――そんなことを考えていると、彼もまた同じような思いを抱いたのか、気の利いたセリフが目の前に差し出された。
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