英雄の妻に転生しましたが、離縁されるようです ~旦那様、悪妻の私を愛さないでください~
 目が合ったとたん、少年はバッと飛び下がって距離を取った。

(なんだか猫みたいな動きだわ)

 ユニークな仕草に誤魔化されそうになるが、今しがた匂いを嗅がれていたのは間違いない。普通に考えればショッキングな光景だったが――。

(うーん……まぁいいか)

 驚きはしたものの、挙動が犬猫のそれと重なったためか不快感は生じていない。よって今のは見なかったことにしてあげようと心に決める。わけのわからない出来事は、もうお腹一杯なのだ。

 少年はたしか「ロキ」と呼ばれていたのを覚えているが、いきなり名前で呼ぶのも不自然だ。言葉遣いに迷いながら、笑顔で話しかけた。

「ええと……案内をありがとう。だけど本当にこのお部屋でいいのかしら?」
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