英雄の妻に転生しましたが、離縁されるようです ~旦那様、悪妻の私を愛さないでください~
 入ってすぐのところで思わず足を止め、感嘆のため息を漏らした。

 華やかな装飾を施された空間に、大きなドレッサーや大理石の書記机が備えられた女性らしい一室。猫足の長椅子はとても優雅で、座り心地が良さそう。戸が開け放たれた奥の部屋には、天蓋つきのベッドが置かれているのが見える。

(でも……汚いわけじゃないけど、どこか変ね……)

 いくつかおかしな点に気がついて、首を傾げた。テーブルに飲みかけのカップが置いてあるし、机の上や部屋の至るところに、つい先ほどまで誰かが使っていたかのような痕跡がある。急なことでルームメイクが間に合わなかったのだろうか。

 その場に立ち尽くしていると、うしろからスンと鼻をすするような音がした。

「えっ?」

 振り向けば、なんとここまで案内をしてくれた少年が、わたしの背中に顔を近づけ、クンクンと鼻を動かしているではないか。

「あの……」
「……!」
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