英雄の妻に転生しましたが、離縁されるようです ~旦那様、悪妻の私を愛さないでください~
 熱っぽい目をした彼が、わたしの手の甲にちゅっと口づけを落とし、思わず表情が蕩けそうになった。
 ヒルダさんが呆れたようなため息をつき、ちくりと爆弾を落とす。

「はぁ。だいぶ浮かれているようですが、式典のご準備は、よろしいのですか?」
「式典の準備……」

 そのひと言で、ハッと現実に引き戻された。
 やはり浮かれるあまりに、大事なことが頭から抜けていたようだ。これではいけないと気を引き締めて、心の焦点を的に向けて結び直す。

 わたしたちの結婚話の起因ともなった式典の開催は、暦の月をまたげばもうすぐだ。
 当該式典は、年に一度、建国記念日に城で開かれる大きな行事であり、王国の発展を祝うとともに、功労者の表彰式も兼ねているという。

 今回の主役はルシウス様で、妻を同伴する流れになっているらしいが、そのように格式高く盛大な催しに、予備知識もなく参加してもよいのだろうか。
 こちらの世界に途中参加したわたしは、貴族としての経験値はないも同然。だというのに、なにかと注目だけは集めてしまう身の上である。
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