英雄の妻に転生しましたが、離縁されるようです ~旦那様、悪妻の私を愛さないでください~
「は……?」

 一瞬ぽかんとしたが、どこか心当たりもちらついて――それに思い至ったとたんに、血の気が引いた。

 脳裏に浮かぶのは、ある夜、世話になった礼だといって一方的に押しつけられたアンクレットのことだ。関わるのが嫌でそのまま片づけてしまったわたしも悪いが、まさかあんな些細な出来事に、罠が仕掛けられていたなんて。

「――あれは、イレーヌ姫が謝礼だと言って勝手に……」

 つい感情的になり、失言に気づいたときにはもう遅い。

「ほら、認めましたぞ! なんて浅ましい女でしょう。絡まれた我が姫が気の毒でなりません……」

 目元を拭い、人々の同情を集める使者とは正反対に、周囲のわたしを見る温度が下がっていくのがわかる。
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