英雄の妻に転生しましたが、離縁されるようです ~旦那様、悪妻の私を愛さないでください~
 そこで弾けるような笑い声を上げたのは、王太子だ。

「証拠まであるのなら、冤罪を疑うまでもない。公国の要求どおり、その女を引き渡すことを検討いたしましょう。捕まえろ!」

 そのひと声で、彼の後方に控えていた私兵の面々が動き出した。『王太子の影』と呼ばれる黒き鎧に身を包んだ者たちが、無慈悲な死神のように押し迫ってくる。

(嫌よ、怖い……来ないで!)

 恐怖におののき、よろよろと後ずさる。
 そんなわたしと彼らの間に、広い背中が立ちふさがった。

「止まれ! 王太子殿下の私兵といえど、妻に危害を加えたら容赦はしない」

 言い放ったルシウス様の手が腰の剣に添えられるのを見て、相手もたちまち身構える。
 ただならぬ雰囲気の中、王太子は余裕の態度でニヤリと笑った。

「ルシウスよ。王族に逆らうつもりか? 剣を抜いたら、反逆罪で死刑だ」
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