英雄の妻に転生しましたが、離縁されるようです ~旦那様、悪妻の私を愛さないでください~
 その彼は今、どうしているだろう。いったん城下のタウンハウスに身を引いたか、それとも城内にとどまり、わたしの無実を訴えてくれているのか。

 おのずとルシウス様の助けを期待してしまうものの、無茶はしてほしくない。いくら英雄であっても、一介の騎士と王族の間には権力の差がある。
 王太子の命令に反してまでもわたしを守ろうとする姿勢を見せてくれた彼だが、そのために不敬罪で処罰されるようなことがあったら目も当てられない。どうか彼自身の保身を最優先にしてほしい――そう祈るように考えていると、扉を隔てた向こう側から、ボソボソと話す男の声が聞こえてきた。

「――警備ご苦労。……さるお方が面会を……このことは内密に……」
「はっ、かしこまりました!」

 気配を察し椅子から立ち上がると同時に、ドアノブが回り扉が開いた。誰が来たのかと思えば、今日顔を知ったばかりの我が父、ルドルフである。
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