英雄の妻に転生しましたが、離縁されるようです ~旦那様、悪妻の私を愛さないでください~
「お、お父様……? どうしてここへ……」
「喜べ。おまえのことを心配し、高貴なお方が足を運んでくださったのだぞ」

 薄ら笑いを浮かべた父が道を空け、人を招き入れた。

 ぬっと前に進み出てきたのは、上質そうなローブを纏った男性だ。
 すぐに顔を隠していたフードが取り払われ、金髪と鋭角な目元があらわになる。それは忘れもしない、式典の場に公国の使者を連れてきて、わたしを窮地に陥れたアーサー王太子だった。

「王太子……殿下?」

 私を心配して来たとは、どういうことだろう。ギクシャクと頭を低くしているうちに、王太子は目の前を横切り、ひとつしかない椅子に堂々と腰を下ろす。

「おまえたち、話がしやすいよう、もっと近くに来るがいい」

 そんな命令が降ってきて、うしろから近寄ってきた父に押されるように立ち位置をずらし、三者で向き合った。
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