英雄の妻に転生しましたが、離縁されるようです ~旦那様、悪妻の私を愛さないでください~
 あっという間に鬼のごとき気配が迫り来て、目の前で刀身が振り上げられた。
 最期に願うことはひとつ。どうかルシウス様には、悲しまないでほしいと。

 ぎゅっと目をつぶり、切り捨てられることを覚悟した。すると、

 ――ガキィィン……!!

 痛みや衝撃は訪れず、代わりに耳をつんざくような金属音が響き渡る。

 はっと目を開くと、目の前には見慣れた大きな背中があった。王太子との間に滑り込んだルシウス様が剣を構え、凶刃を受け止めたのだ。

 交戦は束の間、ルシウス様が腕を前に突き出すと王太子は後方に吹き飛び、「ぎゃっ」と情けない声を上げて尻もちをついた。小気味いい光景だが、これはとてもまずい状況だ。
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