英雄の妻に転生しましたが、離縁されるようです ~旦那様、悪妻の私を愛さないでください~
 アレクシアの本音は確かめようもないが、おそらく離婚は本意ではなかったはず。浅はかな失言を後悔していたと思う。だって、わたしが目覚めたとき、胸の中にざわざわした気持ちが残っていたから。

 そのこととわたしがこの身に宿ったことの関連性は不明だが、これまでアレクシアとして生きてきた記憶が残っていないのは大きな問題だ。ひとりで生きていく術がない状況で、他人のしでかした業まで引き継ぐはめになるなんて。

「困ったわ。これからどうしたらいいの……?」

 焦りを口に出したわたしを楽しげに一瞥し、少年は言った。

「とにかく、今夜はもうおとなしくしてろよ。これ以上手間をかけさせるなら、こっちにも考えがあるぞ!」

 彼の言うとおりだ。こんな真夜中に、いつまでも引き止めておくのも申し訳ない。

「わかったわ、ありがとう。なら遠慮なく、このお部屋で休ませてもらうわね」
「えっ? あー、うん。どうも調子が狂うな……」

 拍子抜けした様子の少年は、室内にあるものは自由にしていいと親切に言い添えて、何度もこちらを振り返りながら去っていった。
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