英雄の妻に転生しましたが、離縁されるようです ~旦那様、悪妻の私を愛さないでください~
     *

(それにしても……アレクシアって綺麗な女性ね!)

 ひとりになってからのわたしはドレッサーのスツールに座り、しばらくの間、自分の顔を見つめていた。

 鮮やかな色合いの髪と瞳を持つ、瑞々しい貴婦人。くっきりとした美貌は気が強そうな印象も受けるが、少し表情を緩めれば紛うことなき美人であり、華やかな雰囲気は大輪の薔薇のごとしである。

(前よりも若返って、美しくもなれて、おまけにお金持ちの伴侶がいるだなんて……これってすごくラッキーなことよね?)

 信じがたい状況にいるというのに、意外にも落ち着いていられるのは、やっぱり中身が香澄であったわたしだから。なにせ前世では、父の借金を返すためにヤのつく事務所に乗り込んだこともあるのだ。いざとなると肝が据わるのは、わたしの特技かもしれない。

 なにごとも、くよくよ悩んでいても仕方がない。せっかく第二の生を得たのなら、楽しんだほうが得だ。望もうが望むまいが、わたしは「アレクシア」として生きていかなければならないのだから。

 颯爽と立ち上がり、眩しいほどの贅を尽くした室内に目を向ける。結婚生活に暗雲が漂っていることを除けば、文句のつけどころのない、素晴らしい環境だ。

 とりわけ気になる点は、夫であるルシウスという人物のこと。
< 38 / 398 >

この作品をシェア

pagetop