英雄の妻に転生しましたが、離縁されるようです ~旦那様、悪妻の私を愛さないでください~
 手短に挨拶を済ませ、すぐ目の前にある空席にルシウス様と並んで腰かけながら、周囲の様子に目を配った。

 ルシウス様いわく、「普段は疎遠で都合のいいときだけ親戚面をする赤の他人のようなもの」だという彼ら。
 王国の各地に根を張る分家筋で、立場は伯爵や子爵などまちまち。こうして出張ってくるのはほとんど母方の血縁者であるらしい。
 ルシウス様の亡き父上は武功により出世した一代貴族であり、婿として家門に迎えられたのだそうだ。

「先達の方々がこのような辺境へ約束もなく押しかけるとは、なにごとでしょうか」

 開口一番、ルシウス様が睨みを利かせて言う。すると奥のほうの席にいる黒髭を蓄えた男が、耳障りな濁声を振りまいた。

「ルシウスよ、その態度はいただけないな。我々は家門の行く末を考え、話し合うべく集まったのだ。おまえはこの度、公爵となった。家門始まって以来の出世であるからには、もはや個人の枠で収まる話ではない」
< 373 / 398 >

この作品をシェア

pagetop