英雄の妻に転生しましたが、離縁されるようです ~旦那様、悪妻の私を愛さないでください~
「……なんだと?」

 彼が語尾を跳ね上げて、怪訝な視線を向けてくる。

 こちらも体を少し横に向け、見つめ返した。言いよどみはしない。これまで何度となく伝えようとしていたことだから。

「あなたに迷惑をかけたくはありません。それに、もともとわたしたちの結婚は王太子と父により仕組まれたものでした。わたしはあなたの命を奪うためにこの家に嫁いだのです。今さら謝ってもどうにもなりませんが、本当に申し訳なかったと思っています」

 さすがの彼も、自分を害そうとしていた女を妻として受け入れることはできないだろう。落胆、呆れ、怒り、そんな反応を見越して心構えをしていると――。

「なんだ、そんなことか」
「えっ? ですが……」

 意を決して告白したのに、他愛ないことのように言われて拍子抜けしてしまう。わざととぼけているのだろうか。
 恐るおそる彼の表情をうかがい見るが、そこにはいつもの理知的な顔がある。
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