英雄の妻に転生しましたが、離縁されるようです ~旦那様、悪妻の私を愛さないでください~
(この男、いったいなにを言い出すの……?)

 不愉快な話を耳にし、眉をひそめた。一部の空気が凍りつくのも感じたが、伯爵は調子に乗るばかりで口を閉じようとしない。

「とどめを刺し損ねた竜が報復のため村を焼き、逃げ遅れた村娘を庇っての最期……美談として伝わっているが、あれではいかん。本家を任されたのなら、もっと家門のことを第一に考えるべきだったのだ。なぁ、我が息子よ」

「ええ、父上。伯父上の行動は、将としても家門の長としても失格だと思います。それに残されたグレイス伯母上が悲しむとわからなかったのでしょうか」

 伯爵が隣り合って座っている自分の息子だという若者と盛り上がる様子を見て、猛烈な怒りが沸き上がった。なんという不敬な者たちだろう。とってつけたようにグレイス様を立てているが、故人に唾を吐きかけるも同然の内容だ。

 こんな話題を続けられてはかなわない。躊躇なく立ち上がり、言い放った。

「命を救って身罷られた方を、卑下するのはおやめください!」
< 381 / 398 >

この作品をシェア

pagetop