英雄の妻に転生しましたが、離縁されるようです ~旦那様、悪妻の私を愛さないでください~
 グレイス様は冷え切った目で伯爵親子を一瞥すると、席を立ってこちらに向かってきた。

 脇目を振らずに目の前に来たグレイス様が、押し殺したような声で言う。

「……あなたたち、離婚する気はないのね」
「はい、グレイス様。申し訳ありませ……えっ?」

 頭を下げようとしたそのとき、グレイス様は机上にあった離婚届を取り上げて、ビリビリと破っていた。

「ど、どうして……」

「わたくしも、あの議会場の傍聴席で、あなたたちのことを見ていました。あなたの真心は十分伝わってきたわ。これまでの印象を覆すには、時間がかかったけれど……。呼び方を義母と改めなさいな。あなたはもうレオパルド家の嫁なのだから」

 そう言って目を合わせた高貴な青の瞳には、南国の湖のような暖かな色が浮かんでいる。
< 383 / 398 >

この作品をシェア

pagetop