英雄の妻に転生しましたが、離縁されるようです ~旦那様、悪妻の私を愛さないでください~
 目安の式典まで三カ月の猶予があるというのだから、それまでに自立できるよう対策したほうが現実的だ。いい子にしておけば、慰謝料も恵んでくれるかもしれない。奥様の身分を諦めるのはちょっぴり残念な気もするが、イケメン夫と幸せな新婚生活なんて、平凡な日本人であったわたしにはしょせん無理な話だったのだ。

(はぁ、なにかどっと疲れが……。もう休もうかな)

 あっさりと白旗を上げたわたしは気持ちを切り替え、初めて訪れた宿の設備をあらためるように、部屋の細部を確認していった。きついドレスを脱いで着替えたいが、パジャマのようなものはないだろうか。

 デラックスでスイートな室内にはストックルームがいくつもあって、冒険心をくすぐられる。扉のひとつを開けると、居間とは様相の異なる小部屋があり、正面の間仕切りの奥から、かぐわしい花の香りと湯気が漂ってくる。

「バスルームがあるわ……!」
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