英雄の妻に転生しましたが、離縁されるようです ~旦那様、悪妻の私を愛さないでください~
 恐る恐る、探るような視線を相手に向けた。わたしを組み伏せる彼は、まるでしなやかな獣のようだ。鋭い眼光に、首から肩にかけての、ごつごつした男らしいボディライン。さらに視線を下にずらせば、屈んだ彼のバスローブの合わせ目から、張り詰めた胸筋と見事に割れた腹筋がちらりと覗いている――。

(はわわ……! わたしったらなにを見ているのよ!?)

 男性に免疫のないわたしの理性は、一瞬にして弾け飛んでしまう。火でもついたかのように顔を熱くしていると、その様子をじっと見下ろしていた彼の口元に、皮肉な笑みが浮かんだ。

「ああ……夜這いだったのか? あれほど傍若無人に振る舞っておきながら、ここにきて男を惑わす毒猫の本領発揮とは……。見苦しい悪あがきだ」

 とんでもない言葉を投げかけられて、ひゅっと喉から変な音が出た。

(夜這い? まさかわたしが彼を襲いにきたと思われているの?)
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