英雄の妻に転生しましたが、離縁されるようです ~旦那様、悪妻の私を愛さないでください~
 ぐっと感情を込めて睨み返すと、彼の青い瞳がわずかに揺らいだのがわかった。小動物みたいなわたしに噛みつかれるとは思わなかったのだろう。少しは意趣返しができただろうか。

 とはいえ、しょせんは小心者のわたし。彼が怒りだすのではないかと怖くなり、一転して全身の震えが止まらなくなってしまう。そもそも、わたしのほうから彼の部屋に侵入したことは事実であり、逆ギレと言われればそれまでである。

 突然のパニック発作に襲われたわたしは、早口にまくし立てていた。

「すすす、すみません、出過ぎたことを申しました。離婚予定の妻を相手に、そんな気は起こりませんよね……。じ、実はわたしも生々しいのは不得手なので、できれば今後もプラトニックでお願いしたいと……なにを言ってるんでしょう、わたしったら!?」

「……は?」

「ですから、その……もう夜も遅いですし今夜はこれで失礼しますので、そこを退いていただけませんか、旦那様……!」
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