英雄の妻に転生しましたが、離縁されるようです ~旦那様、悪妻の私を愛さないでください~
 ぬるめの水で顔を洗い、受け取ったタオルで顔を拭くと、頭もすっきりと冴えてくる。

「ロキ君は……わたしが変わったって、わかるのよね?」
「オレ様は特別だからな! 匂いでわかるとも」

 思わず、尊ぶような気持ちで彼を見た。転生したなどという荒唐無稽な話を、どう打ち明けていいかわからない。けれども先入観なく素のままのわたしを受け入れてくれる存在を得られたことは、とても心強い。

 ひとまずアレクシアとしての記憶がないという点については、正直に打ち明けておくことにした。改まって話をすると、彼は驚きも疑いもせずに「ふぅん」と頷く。理由もなにも尋ねてこないが、すでに感覚的に知っているから、それがどうしたという呈らしい。

 つきっきりで相談に乗ってほしいと頼んだが、忙しいと断られてしまった。

「用が済んだから、ルシウス様のところへ戻る。おまえの目が覚めたら報告するよう言われているんだ。頭を打ったらしいが、元気そうだから問題ないよな」
「え、ええ。まぁ……」
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