英雄の妻に転生しましたが、離縁されるようです ~旦那様、悪妻の私を愛さないでください~
「ご主人様以外の者に尻尾を振るなんて……あの女に悪い術でもかけられたの?」
「そういうんじゃない。頭でっかちに説明するのは面倒だから、わからないなら別にいい」

 冷静なようで気性の荒いヒルダはロキの言動が気に障ったのか、地面を蹴って飛びかかっていった。大きな土埃を上げて取っ組み合いに発展するが、問題はない。彼らにとってはいつもの遊びの一貫だ。

(それにしても、ロキが一夜にしてアレクシアへの心象を変えるとは……)

 知能の高い魔獣は、ひ弱な人間のことを下に見ており、獲物と思っている節がある。これはロキとヒルダも同様、種族の本能として持っているものだ。

 繰り返すが、契約獣が従うのは己よりも強い者――主と認めた、このルシウスただひとり。一介の人間が不用意に近づける存在ではない。屋敷の者たちはそれを理解しているから、一歩下がった距離から踏み込もうとはしない。
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