義兄に恋してたら、男になっちゃった!? こじ恋はじめます
プロローグ
お風呂からあがった私は、喉の渇きを感じてキッチンへと向かった。
冷たい水を飲もうとしたとき、ふと見たいテレビがあったことを思い出す。
コップを片手に持ったまま、リビングの方へと歩き出した。
けれど――途中で、何かにつまずいた。
しまった! またやってしまった。
私は昔から、こういうおっちょこちょいな失敗が多い。
転ぶ衝撃に備え、ぎゅっと目を閉じた瞬間、誰かにしっかりと抱きとめられた。
伝わる感触。包み込むような温もり。
それから、この匂い……。
そっと、その人物へと視線を移す。
「あっぶねえなあ。ほんと、唯はそそっかしいんだから」
私を見つめるその瞳は優しくて、口元にはどこか悪戯っぽい笑みが浮かんでいた。
さらさらの髪から覗く切れ長の瞳。
整った鼻筋と、薄くて綺麗な形をした唇。
まるでモデルのように整った顔立ちとスタイルを持つ彼の名は――
川野咲夜。
「俺の妹とは思えないよな。俺、運動神経いいし」
ニヤリと笑うその瞳は、まるで子どものように澄んでいて。
無邪気なその微笑みに、つい見惚れてしまう。
はっ、と気づき、慌てて視線を逸らした。
ダメよ、こんなの……!