義兄に恋してたら、男になっちゃった!? こじ恋はじめます

 残された二人のあいだに、しんと静けさが落ちる。

「……すみません。僕のせいで」

 流斗さんが、申し訳なさそうに視線を落とした。

「なんで流斗さんが謝るんですか?
 だって、私たち付き合ってるんですよ。いいじゃないですか、兄に見られたって」

 そう言いながら、目には涙が滲む。

「あれ? なんで……」

 慌てて顔を逸らした。

 見られたくない。
 彼を傷つけてしまうかもしれない。

「唯さん……」

 流斗さんがそっと、私の頬に手を添えた。

 やわらかな手が、そっと顔を向けさせようとする。
 けれど、それを拒んでしまった。

「ごめんなさい、流斗さん。今日は、もう――」

 小さく頭を下げて、逃げるように家の中へ駆け込んだ。


 最低だ。流斗さんを利用して、傷つけて。
 もう嫌、自分が嫌!

 そのまま階段を駆け上がり、自分の部屋のドアを閉める。

 胸の奥から、痛みが込み上げてきた。

 いろんな感情が一度に押し寄せてきて、息が苦しくなる。
 抗おうとしても、どうにもならない。

 私はそのまま、声を押し殺し、嗚咽と一緒に泣いた。



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