義兄に恋してたら、男になっちゃった!? こじ恋はじめます

「唯、先に謝らせてくれ。
 最近、俺……態度悪かったよな。ごめん」

 兄がいきなり頭を下げてきた。

「え!? な、何、急に……やめてよ!」

 あわてて声を上げる。どうしていいかわからない。

「俺、ずっと逃げてたんだ。唯からも、親父のことからも」

 顔を上げた兄の瞳は、悔しさと悲しみが、複雑に揺れていた。

「唯のこと、好きなくせに。
 もし想いを伝えて拒絶されたらって思うと、怖くてさ。
 親父のことだって……負い目があって。
 そのことで嫌われたらって、不安で仕方なかった。

 でも結局、自分が傷つきたくなかっただけなんだよな。
 本当の気持ちなんて、聞いてみなきゃわからないのに……。
 俺、だっせえ。勇気が出なかった」

 自嘲ぎみに笑う兄に、私は思いきり首を振った。
 私だって同じだ。怖かった。想いを伝えて、拒絶されることが。

「流斗のことだって……口では応援してるふりしてたけど、内心は気が気じゃなかった。
 嫉妬ばっかりで、落ち着かなくて。
 なのに“唯の幸せのため”なんて言い訳して、あきらめようとしてたんだ。
 ……ほんと、バカだよな、俺」

 兄はふうっとため息をつき、空を仰いだ。
 舞い落ちる雪をじっと見つめ、ゆっくりと目を細める。

「流斗に言われて、はっとしたんだ。
 俺、自分のことばっかり守ろうとしてたんだなって」

 そして――兄がゆっくりと顔をこちらへ向ける。
 その瞳は、私の奥に触れるみたいに、静かに重なってきた。


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