義兄に恋してたら、男になっちゃった!? こじ恋はじめます

「ただいまー!」

 玄関から父の声が響き、兄は弾かれたように私の上から飛び退いた。

「げっ、父さん!? なんで帰ってくんだよ!」

 慌てふためく兄を横目に、私は急いで乱れた衣服や髪を整える。
 両親を迎える準備を整えながら、心臓はバクバクと高鳴っていた。

「あー、お腹空いたよ」

「ほんとうねえ」

 そんな他愛もない会話をしながら、父と母がリビングへやってきた。

「ど、どうしたの? レストランで食事してくるんじゃなかったっけ」

 予定よりずっと早い帰宅に、私は小さく首をかしげる。
 すると、父が困ったように笑った。

「ん? それがさあ。臨時休業だったんだよ」

「ほんと、ついてないんだから~。ねえ、咲夜の料理、何か余ってない?」

 母がキッチンの方へ物色に行き、
 父は私のところへふらりとやってきて、そのままふにゃっと抱きついてきた。

 柔らかな感触にふっと頬が緩む。
 これは父なりの愛情表現のひとつで、癖みたいなものだ。
 嬉しいんだけど、ちょっと暑苦しいんだよね。

「あれ? なんか唯、顔赤くない? 熱でもあるのかい?」

 心配そうに私の顔を覗き込む父に、あわてて笑顔を作る。

「えっ、そうかな? 別に。全然、大丈夫!」

 必死にごまかしながら、私はちらりと兄を見る。
 兄は苦笑いのあと、ニッと笑ってウインクをよこしてきた。

 ……反省してないな。
 ほんと、油断も隙もないんだから。

 そっと息をついたとき、ふとさっきの場面が脳裏をよぎる。
 顔がかぁっと熱くなった。

 や、やばい。冷静に冷静に。

 まったく、勝手な兄で困る。
 でも憎めないんだよなあ。
 なんだかんだで、結局いつも許しちゃう。

 ……ていうか、そういうとこも――好き。


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