義兄に恋してたら、男になっちゃった!? こじ恋はじめます
「さてと、夕飯は何にしようか」
兄がこちらに顔を向けた瞬間、私は慌てて視線を逸らした。
「え? べ、別になんでもいいよ」
平静を装って答えるが、心臓は跳ねるように脈打っている。
「じゃあ、オムライスでも作るか。唯、好きだもんな」
優しく微笑んで、兄は私の頭を軽く撫でてきた。
いつもこうやって子ども扱いするんだから……。
ほんのり反発心を抱きながらも、私は嬉しい気持ちを隠せないでいた。
――頭を撫でられたこともだけど。
兄の料理は本当に美味しい。それはもうほっぺが落ちるほど。
兄は手際よくエプロンを身につけ、キッチンへ向かう。
その何気ない後ろ姿にも、つい見惚れてしまった。
いけない、いけない。
私は心の中で呪文のように唱え、兄から視線を外す。
いったい、何度この葛藤を繰り返してきたんだろう。
仕草、表情、言葉、すべてに魅了される。
兄のそれらに触れるたび、私の想いは募るばかり――。
それでも伝えることはできず、胸の内で想いは膨らみ続ける。
ああ、神様はなんて意地悪なんだろう。
どうして私たちを兄妹にしたの?
そんな私の気持ちなど知るよしもなく、兄は楽しげに料理を進めていた。
「もうすぐできるぞ〜。まってろよ」
鼻歌まじりにフライパンを振る兄。
呑気なその姿に、つい心の中で毒づきながらも、私はやっぱり兄から目を離せないでいた。