義兄に恋してたら、男になっちゃった!? こじ恋はじめます

 彼女は私にとって、頼りになる姉のような存在だった。

 蘭には、どこぞの孤高のアイドルのような強さがある。
 自分を持ち、ちょっとやそっとじゃへこたれない。
 他人から否定されても、それを平然と跳ねのけてしまう。
 人の評価なんて気にせず、はっきりと自分の意見を言える。

 そんな彼女のことを、私は密かに尊敬していた。

「蘭……」

 私が感動して抱きつこうとした、その瞬間。
 蘭の表情がふっと変わった。

「でも、いいなあ。流斗さんも実は憧れてたんだよね。いい男だもん。
 ……なるほど、こうなったか」

 意味深な笑みを浮かべ、蘭がつぶやく。

 な、なに?

 不安になって蘭を見つめると、彼女は急に話題を変えてきた。

「ねえ、それより、あの子は?」

「は? あの子?」

 私が聞き返すと、蘭は腰に手を当てて怒ったように言った。

「南、優くんのことよ! 唯の従弟なんでしょ?
 あんな可愛い従弟がいるなんて知らなかったわよ。
 あの子、あんまり学校に来ないよね。なんで?」

 興味津々の蘭に、私は内心ドキドキしながら家族で決めた設定を思い出す。

「ああ、優ね。学校がちょっと苦手で、家庭教師を雇って家で勉強してるの。
 だから学校には最低限しか来てないの」

 なんとかごまかしてみせると、蘭はふーんと納得したような、していないような顔をした。

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