義兄に恋してたら、男になっちゃった!? こじ恋はじめます

 放課後、私はいつものように兄が待っているであろう校門へと向かう。

 隣を見れば、ちょっとウキウキしている蘭がいた。
 これ、いつものこと。

 蘭は、兄と流斗さんに会えることが嬉しくてたまらないらしい。

『目の保養……だもんね』

 心の中でそうつぶやき、苦笑する。


 校門前には、いつも通りたくさんの生徒の姿があった。
 おしゃべりしながら歩くグループに、ひとりで急ぎ足の子。

 その向こうに、ひときわ目立つ二人の姿が見えた。
 兄の隣に立つ流斗さんの姿が視界に飛び込んだ瞬間、胸が小さく跳ねる。

 ――あれ、なんだろう?

 いつもと違う。
 流斗さんを見ただけで、こんなにときめくなんて。

 まさか、恋人になったことで意識するようになっちゃった?

「お、お待たせ」

 私は兄に向かって微笑みかける。
 でも、なぜか流斗さんの方へは視線を向けられない。

 見たらドキドキしてしまうから。

 変に思われるから向かなきゃ、と思えば思うほどできなくなる。

「おい、唯、大丈夫か?」

 様子がいつもと違うことに気づいた兄が、訝しげに声をかけてくる。

「なんでもないっ。蘭、じゃあまた明日、ばいばい」

 兄の視線をかわすように、私はあえて明るく蘭に声をかけた。
 少しわざとらしかったかもしれないけど、気持ちを悟られたくない。

 でも、肝心の蘭はというと――兄と流斗さんに視線を釘付けにしたまま。
 キラキラと輝く瞳で、うっとりしていた。

「ばいばい!」

 もう一度、今度はわざと大きな声で呼びかけると、蘭がハッと気づいたようにこちらを見た。

「あ、唯。うん、ばいばい。
 ……咲夜さん、流斗さん、さようなら」

 澄まし顔でおしとやかに手を振る蘭に、心の中でツッコミを入れる。

『なんだよ、そのわざとらしい手の振り方は!』

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