義兄に恋してたら、男になっちゃった!? こじ恋はじめます

 蘭と別れた私は、兄と流斗さんに挟まれる形で通学路を歩きはじめた。

 これまでは、兄に触れるたびドキドキしていたけど、今は流斗さんに触れても胸が高鳴る。
 先ほどから何度も、流斗さんの腕や肩が私に触れて。そのたびに心臓が跳ねる。

 どうしよう、なんだか落ち着かない……。

 気を紛らわせようと、私は兄に声をかけた。

「今日の晩御飯って、何かな?」

 唐突すぎる話題に、兄が怪訝そうな顔を向けた。

「は? 知らねえよ。まあ、母さんの料理は何でもうまいけどな」

「そ、そうだね」

「へえ、そうなんですか? 僕も食べたいなあ」

 会話に割り込んできた流斗さんが、兄に笑いかけたあと、私にも眩しい笑顔を向ける。
 その視線に耐えきれず、私はぎこちない笑みを返した。

 顔、ひきつってないよね? 不安でたまらない。

 変に思われないように、話題を振ってみた。

「あの、流斗さんの好きな食べ物って何ですか?」

 自分で言っておいて、顔がじんわり熱くなる。
 ……もう、なにこの小学生みたいな質問!

「そうですね……。唯さんが作ってくれる料理なら何でも好きですよ。今度作ってほしいな」

 眩しい笑顔とともに飛び出したその言葉。

『とんでもないリクエストしないでぇぇぇ!!』

 内心で叫びながら、私はまた、ぎこちなく笑った。


< 74 / 230 >

この作品をシェア

pagetop