【書籍化】幼馴染のエリート外交官にカラダから堕とされそうです
 楓はしばらく黙った後、やけに明るいトーンでそう呟いた。そして二階の部屋からダイニングへ向かおうとする。
 
 普段と違う様子が気になって、俺は咄嗟に立ち上がり、後を追おうとした。


「楓――」
「――あっ……」


 だが、そのとき。楓が足を滑らせ、バランスを崩した彼女の体が大きく傾いた。

 ――まずい……っ。

 咄嗟に俺は楓の体を抱きかかえ、転倒の衝撃から守った。
 ズシリとした重みが胸にのしかかり、俺は彼女をしっかりと抱きとめた。


「大丈夫か……?」


 腕の中の彼女を見て声をかける。
 だが、次の瞬間、目を見開いた。
 
 声がでてこなかった。
 
 今にも泣きそうな潤んだ瞳。真っ赤な頬に色づいた唇。手は俺の制服のシャツを掴みながら小刻みに震えている。
 
 明らかに自分が転んだことよりも、俺の腕の中にいるこの状況に戸惑う顔だ。
 自分の中の欲望に火が付くのを感じた。


「ご、ごめん……奏くん」


 頭の中で、自分が彼女に襲いかかる姿を想像しかけて、はっと我に返った。

 ――俺、今何を考えていた……?


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