嫌いになれたら楽なのに。
「ねー。来週いつ和菓子屋行く?」
「いや放課後しかないでしょ。授業抜けるつもり?」
「つもりー」
「おーい」
私の友達二人が仲良く話している。別に今は休み時間だし、このくらい普通のことなんだけど。
私は許せない。
だって、二人は男女だから。一人は三浦彩紗。私の一番仲のいい友達……の、はず。もう一人は中村優紀。私の唯一の男友達。そして……私の、好きな人。
男子とうまく話せない私と仲良くしてくれて、話してると楽しくて。気が付けば好きになっていた。
好きになったばかりのころは楽しかったな。
振り向いてほしくて、メイクやおしゃれを始めてみたり。たくさん話したくて、頑張って自分から話しかけてみたり。席替えで近くになれるように、ありったけのおまじないや占いを試してみたり。
それが今は、苦しいだけ。
理由の一つは彩紗ちゃんだ。
彩紗ちゃんは、成績優秀で、男女問わず誰とでも仲良くなれる。スポーツだって、一週間練習すれば並より上は容易い。いわゆる優等生だ。でも、ちょっとだけ空気が読めないところがあって、前の友達とはうまくいかなかったみたいだけれど。私はうまくいくように結構彩紗ちゃんに合わせることが多い。でもとっても優しくて気さくで、私はそんな彩紗ちゃんが大好きだった。――半年前までは。
「ね、香音。要祭のパンフレット持ってる?」
あ。彩紗ちゃんに話しかけられた。要祭というのは、わが校要中学の文化祭のこと。本当はまだパンフレットは配られていないんだけど、私は委員長だから特別に配られているんだ。
「……何に使うの?」
嫉妬のせいで、ちょっと冷たい言い方になってしまう。けれど彩紗ちゃんはそんなことに気が付かない。
「あのね、ちょっと予定を確認したいんだよねぇー。ね、中村」
「うん。ちょっとやばそうでさ。お願い白城さーん」
……嫌だな。
でもそんなこと、言えるわけないし。こんな気持ち、ただの意地悪だし。
二人は、要祭での役割は物品販売だ。去年から、中学校でも販売がおっけいになったんだ。といっても、生徒で何かを作るわけじゃなくて、地元の商店街の物だけど。
二人はその関係で、最近は一緒に話すことが多いし、一緒に商店街に出かけることも多い。さっき言っていた和菓子屋も、おそらくその一つだ。
……そんなの、ほとんどデートじゃない。付き合ってないって、彩紗ちゃんは言ってるけど。
「はい。どうぞ」
「ありがとー!すぐ返すー」
駄目だ。とても、彩紗ちゃんに本音を言うなんて。怖いし、それになにより面倒なんだ。前に一回、嫌だと思っていたことを言ったら、なんか一週間会話してくれなくなったし。
この恋は、今はただ、苦しいだけ。
どうしようもないほど嫉妬してるの。彩紗ちゃんに。彩紗ちゃんは、私より勉強もスポーツもなんだってできるのに。
なんでわざわざ私の好きな人とも仲良くしちゃうんだろう。しかも私の目の前で。
今の席も本当に地獄だ。
私の右隣に彩紗ちゃん。彩紗ちゃんの右斜め前に中村。二人の会話を、聞こうとしなくても耳に入ってくる。
早く席替えしたい。ああ、早く授業始まっちゃえばいいのに。そしたら会話する回数も減るから。自動的に。
「いや放課後しかないでしょ。授業抜けるつもり?」
「つもりー」
「おーい」
私の友達二人が仲良く話している。別に今は休み時間だし、このくらい普通のことなんだけど。
私は許せない。
だって、二人は男女だから。一人は三浦彩紗。私の一番仲のいい友達……の、はず。もう一人は中村優紀。私の唯一の男友達。そして……私の、好きな人。
男子とうまく話せない私と仲良くしてくれて、話してると楽しくて。気が付けば好きになっていた。
好きになったばかりのころは楽しかったな。
振り向いてほしくて、メイクやおしゃれを始めてみたり。たくさん話したくて、頑張って自分から話しかけてみたり。席替えで近くになれるように、ありったけのおまじないや占いを試してみたり。
それが今は、苦しいだけ。
理由の一つは彩紗ちゃんだ。
彩紗ちゃんは、成績優秀で、男女問わず誰とでも仲良くなれる。スポーツだって、一週間練習すれば並より上は容易い。いわゆる優等生だ。でも、ちょっとだけ空気が読めないところがあって、前の友達とはうまくいかなかったみたいだけれど。私はうまくいくように結構彩紗ちゃんに合わせることが多い。でもとっても優しくて気さくで、私はそんな彩紗ちゃんが大好きだった。――半年前までは。
「ね、香音。要祭のパンフレット持ってる?」
あ。彩紗ちゃんに話しかけられた。要祭というのは、わが校要中学の文化祭のこと。本当はまだパンフレットは配られていないんだけど、私は委員長だから特別に配られているんだ。
「……何に使うの?」
嫉妬のせいで、ちょっと冷たい言い方になってしまう。けれど彩紗ちゃんはそんなことに気が付かない。
「あのね、ちょっと予定を確認したいんだよねぇー。ね、中村」
「うん。ちょっとやばそうでさ。お願い白城さーん」
……嫌だな。
でもそんなこと、言えるわけないし。こんな気持ち、ただの意地悪だし。
二人は、要祭での役割は物品販売だ。去年から、中学校でも販売がおっけいになったんだ。といっても、生徒で何かを作るわけじゃなくて、地元の商店街の物だけど。
二人はその関係で、最近は一緒に話すことが多いし、一緒に商店街に出かけることも多い。さっき言っていた和菓子屋も、おそらくその一つだ。
……そんなの、ほとんどデートじゃない。付き合ってないって、彩紗ちゃんは言ってるけど。
「はい。どうぞ」
「ありがとー!すぐ返すー」
駄目だ。とても、彩紗ちゃんに本音を言うなんて。怖いし、それになにより面倒なんだ。前に一回、嫌だと思っていたことを言ったら、なんか一週間会話してくれなくなったし。
この恋は、今はただ、苦しいだけ。
どうしようもないほど嫉妬してるの。彩紗ちゃんに。彩紗ちゃんは、私より勉強もスポーツもなんだってできるのに。
なんでわざわざ私の好きな人とも仲良くしちゃうんだろう。しかも私の目の前で。
今の席も本当に地獄だ。
私の右隣に彩紗ちゃん。彩紗ちゃんの右斜め前に中村。二人の会話を、聞こうとしなくても耳に入ってくる。
早く席替えしたい。ああ、早く授業始まっちゃえばいいのに。そしたら会話する回数も減るから。自動的に。
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