行き倒れ騎士を助けた伯爵令嬢は婚約者と未来の夫に挟まれる

14おでかけ

 フレデリックの屋敷に住むようになってから、数週間が経った。フレデリックの屋敷にはフレンも住んでいるが、屋敷の人間にはフレデリックがうまいこと言っているので、今のところは怪しまれていないようだ。

「今日はフレデリック様とドレス選びに行く日ですよね。街へ行くんですから、しっかりおめかししますよ」

 腕を捲って元気にそう言うのはメイドのローリアだ。フレデリックの屋敷でアリシアの担当メイドであるローリアはアリシアより少し年下で、母親もこの屋敷でメイドをしている。

「おめかしって、そんなに気合を入れなくても……」
「ダメです、フレデリック様はお若いのにお忙しい方なので、あんまりお出かけとかできないじゃないですか。たまのお出かけはフレデリック様だって楽しみにしてらっしゃるんです、アリシア様がおめかししてたら絶対に喜びますよ」

 それに、とローリアは言葉を続ける。

「フレン様もご一緒なんですよね?見目麗しいお二人に挟まれたアリシア様もとびきり美しくしないと私が納得できません」

 そう言ってふんすと鼻息を荒くするローリアを、アリシアはくすくすと楽しそうに笑う。

「アリシア様、ここに来てすぐは少し塞ぎ込んでるようでしたけど、最近はよく笑ってくれるようになって嬉しいです」
「……心配かけてごめんなさい。ローリアと話をしていると楽しくなってくるから不思議だわ。でもありがとう。これからもよろしくね」

 アリシアがそう言ってフワッと笑うと、ローリアは頬を赤く染めて嬉しそうに笑い、ハイッ!と威勢よく返事をした。

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