行き倒れ騎士を助けた伯爵令嬢は婚約者と未来の夫に挟まれる




 アリシアとメリッサが和解してから一週間後。フレデリックは王城に隣接する騎士団の第三鍛錬場でサリオンと対峙していた。この鍛錬場は予備として設置してあるため普段ほとんど使われることがなく、他に誰もいない。

「こんなところに呼び出して、話って一体なんだい?メリッサのことだっていうから来てみたけれど」

 薄紫色の少し長めの髪を靡かせて、サリオンは腕を組みフレデリックを見つめている。羽織っている魔術師のローブが、風に吹かれてひらひらと揺れている。

「お前、メリッサに近づいてどういうつもりだ?お前はメリッサのことが好きなんだろう?それなのに、メリッサを応援するようなことをして、一体何を企んでいるんだ」

 厳しい口調でフレデリックがそう言うと、サリオンはフッと口角を上げた。

「俺がメリッサを好きってよくわかったね?ああ、メリッサにいろいろと助言をしているってメリッサから聞いた?そうだな、俺はメリッサが幸せであればそれでいい。メリッサが望むのであれば、お前がメリッサと一緒になっても構わないさ。それがメリッサの幸せなら、俺がメリッサを幸せにしたことになるだろう。俺が孤独なメリッサの唯一の理解者だ。メリッサをわかってあげられるのは俺だけなんだよ」

 嬉しそうにそう言って、サリオンは不気味に微笑んだ。

「メリッサはもうお前には会わない。アリシアとメリッサはきちんと話し合って本当の姉妹のように心を通わせるようになった。お前はメリッサにもう必要ない」

 フレデリックの言葉を聞いて、微笑んでいたサリオンの眉がピクリ、と動く。

「は?メリッサは俺がいなきゃだめだ。メリッサには俺が必要なんだよ、メリッサの孤独に寄り添えるのは俺だけだ。俺だけでいいんだよ、アリシアなんて必要ない」
「お前の方がメリッサにふさわしくないだろ。アリシアとメリッサの仲を取り持つどころか、二人を引き離すようなことばかりして、お前がメリッサの孤独を広げていたんじゃないか。そんなの、本当にメリッサを思っているとは到底思えない」
「うるさいな、メリッサは俺がいればいいって言っただろ。メリッサの側に誰がいようが、俺がメリッサの唯一の理解者だ」


 サリオンの言葉と共に、フレデリックの顔のすぐ横でバアン!と小さな爆発が起こった。

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