行き倒れ騎士を助けた伯爵令嬢は婚約者と未来の夫に挟まれる



「サリオンとはいつも仲が良いみたいね。幸せそうでよかったわ」
「ありがとう、お姉様。誤解されやすい人だけど、でも本当は優しくて純粋で思いやりのある人なの。いつもサリオンには心の支えになってもらっているわ」

 そう言って、綺麗な瞳をアリシアに向けて微笑む。

「お姉様が私にちゃんと向き合ってくださったお陰で、私も彼に向き合おうと思えたの。そして、彼に愛を与えることができるし、彼からの愛を受け取ることもできた。私も彼もお姉様たちに酷いことをしたわ。それでもお姉様たちは私たちにちゃんと向き合って道を正してくれた。本当にごめんなさい、そして、ありがとう」
「メリッサ……」

(メリッサがこんなに変わったのも、あの時メリッサとちゃんと向き合ったからこそなのよね、そして、それができたのはフレンとフレデリックがいてくれたからだわ)

 アリシアの中にあたたかいものがどんどん流れて広がっていく。誰かがかけることもなく、憎み合うこともなく、こうして幸せに思えること、幸せを分かち合えることに嬉しさで胸が震えるようだ。

「あ、サリオンたちがこちらに来るわ。それにしても、いつも以上に色気がすごいわね」
「周囲にいる令嬢たちの目がハートになってる」

 フレンは元から人気者ではあったが、サリオンはそもそも周囲から嫌われ、社交の場には一切現れなかった。だが、メリッサと友達となり仲を深め、メリッサと恋人となり結婚すると、サリオン自身にも変化が見られる。相変わらず人嫌いなことには変わりないが、メリッサのパートナーとして恥じない行動をすると心がけており、なおかつどんな時でもメリッサがサリオンの味方になっている。そのお陰でサリオンは周囲からも認められ、今ではすっかり人気者になっている。

「私たちもうかうかしていられないわね」
「ええ、私たちの大切な旦那様ですもの!」

 そう言って、アリシアとメリッサは美しい微笑みを浮かべながら、そばにきたフレンとサリオンの手を取った。


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