行き倒れ騎士を助けた伯爵令嬢は婚約者と未来の夫に挟まれる
◇
参加している貴族たちへの挨拶をすませ、アリシアたちは四人で談笑していた。すると、会場内に音楽が流れ始める。舞踏会の主催者である上流貴族の夫婦が華麗に踊り始めた。パートナーの決まった令息令嬢たちもそれに続いて踊り始める。今回の舞踏会では独身の令息令嬢だけではなく、夫婦で招待されている貴族もいて、次々にダンスが始まった。
「俺たちも踊ろう、アリシア」
そう言ってフレンがアリシアの手をとる。サリオンもメリッサの手をとって、それぞれ踊り始めた。
「懐かしいな」
「そうね」
アリシアは踊りながらふふっと微笑むと、フレンを見上げる。今まで何度もこうして二人でダンスをしてきたが、やはりあの日のことを思い出してしまう。
(あの時は、当時のフレンと踊ったんだったわ。慣れない私をリードしてくれて、頼り甲斐があって素敵だった)
「もしかして、あの日のこと思い出してる?あの時の俺は若い頃のフレデリックだよな」
「まさか妬いてるの?若い頃のあなたなのに?」
「それでも、だよ。あの頃も何度も言っただろ」
記憶が全て噛み合った今、若い頃の自分に妬く必要はない。それでも、癖のようになんとなくそう思ってしまう自分がいて思わず苦笑する。
「ダンスが終わった後、未来から来たあなたに、相変わらずダンスが苦手なんだなって言われて不思議な気分だったわ。でも、俺としか踊らないから問題ないって言われて、不思議だけどとても嬉しかったの」
アリシアに言われて、フレンは少し驚いた顔をしてから嬉しそうに微笑んだ。
(あの後、メリッサからもらったドリンクを飲んで、体がおかしくなって、若い頃のフレンに……)
ふと、その時のことまで思い出してしまい、アリシアの顔が赤くなる。フレンはそんなアリシアを見て目を細め、耳元でそっと呟く。
「アリシア、あの時のことを思い出してる?」
「……っ!」
耳まで真っ赤になるアリシアを見て、フレンは妖艶に微笑んだ。
「あの時は若い頃の俺がアリシアを助けるべきだ、と身をひいたけど、今は記憶が若い頃の俺と噛み合っているから、俺の中にちゃんとあの時の記憶がある」
「そ、そうなの?」
(それは嬉しいけど、でもやっぱり恥ずかしい)
「そんなに可愛い顔されると、屋敷に戻るまで我慢できなくなるな」
「なっ、だめよ!屋敷に戻るまで我慢して」
「ふっ、はいはい」
(もう、フレンの意地悪)
むう、と頬を少しだけ膨らませてフレンを見上げると、フレンは愛おしいものを見つめる目でアリシアを見て優しく微笑んだ。
参加している貴族たちへの挨拶をすませ、アリシアたちは四人で談笑していた。すると、会場内に音楽が流れ始める。舞踏会の主催者である上流貴族の夫婦が華麗に踊り始めた。パートナーの決まった令息令嬢たちもそれに続いて踊り始める。今回の舞踏会では独身の令息令嬢だけではなく、夫婦で招待されている貴族もいて、次々にダンスが始まった。
「俺たちも踊ろう、アリシア」
そう言ってフレンがアリシアの手をとる。サリオンもメリッサの手をとって、それぞれ踊り始めた。
「懐かしいな」
「そうね」
アリシアは踊りながらふふっと微笑むと、フレンを見上げる。今まで何度もこうして二人でダンスをしてきたが、やはりあの日のことを思い出してしまう。
(あの時は、当時のフレンと踊ったんだったわ。慣れない私をリードしてくれて、頼り甲斐があって素敵だった)
「もしかして、あの日のこと思い出してる?あの時の俺は若い頃のフレデリックだよな」
「まさか妬いてるの?若い頃のあなたなのに?」
「それでも、だよ。あの頃も何度も言っただろ」
記憶が全て噛み合った今、若い頃の自分に妬く必要はない。それでも、癖のようになんとなくそう思ってしまう自分がいて思わず苦笑する。
「ダンスが終わった後、未来から来たあなたに、相変わらずダンスが苦手なんだなって言われて不思議な気分だったわ。でも、俺としか踊らないから問題ないって言われて、不思議だけどとても嬉しかったの」
アリシアに言われて、フレンは少し驚いた顔をしてから嬉しそうに微笑んだ。
(あの後、メリッサからもらったドリンクを飲んで、体がおかしくなって、若い頃のフレンに……)
ふと、その時のことまで思い出してしまい、アリシアの顔が赤くなる。フレンはそんなアリシアを見て目を細め、耳元でそっと呟く。
「アリシア、あの時のことを思い出してる?」
「……っ!」
耳まで真っ赤になるアリシアを見て、フレンは妖艶に微笑んだ。
「あの時は若い頃の俺がアリシアを助けるべきだ、と身をひいたけど、今は記憶が若い頃の俺と噛み合っているから、俺の中にちゃんとあの時の記憶がある」
「そ、そうなの?」
(それは嬉しいけど、でもやっぱり恥ずかしい)
「そんなに可愛い顔されると、屋敷に戻るまで我慢できなくなるな」
「なっ、だめよ!屋敷に戻るまで我慢して」
「ふっ、はいはい」
(もう、フレンの意地悪)
むう、と頬を少しだけ膨らませてフレンを見上げると、フレンは愛おしいものを見つめる目でアリシアを見て優しく微笑んだ。