明治、一目惚れの軍人に溺愛されて
すると桐島中尉がこちらを向く。

「その時は、志乃さんが受け取りに?」

「え、ええ……」

自分でも驚くほど声が震えてしまう。

「では、また会えるかもしれませんね。」

そう言って微笑んだ桐島中尉の表情が、私をまっすぐに捉えた。

軍服の威圧感も、父の隣にいる窮屈さも、その一瞬だけは消えてしまう。

ただ彼の眼差しと笑みが胸を占め、心臓の鼓動が早鐘のように鳴り響いた。

――また会いたい。

そう思ってしまう自分に気づき、頬が熱くなる。

呉服屋の帳場で交わされた何気ない言葉。

「ではまた、その時に。」

「はい。……お会いできれば。」

短い言葉を交わして、私たちは別れた。

胸の鼓動がいつまでも収まらない。

その後ろで、女将さんが父に話しかけているのが聞こえた。

「珍しいですね。桐島中尉が女性にお声をかけるなんて。」
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