明治、一目惚れの軍人に溺愛されて
「ほう?」父が怪訝そうに眉を上げる。

「いつもはとても寡黙な方なんですよ。お買い物でも必要なことしか仰いませんし。」

「そうは見えないけどな。」

父は笑い、桐島中尉の去っていった背を見送った。

――寡黙な人が、私には微笑んで言葉をくれた。

その事実が、なぜか胸を熱くしてやまなかった。

家に帰ると、父は母に桐島中尉と会ったことを話した。

「帝国軍人は冷たい人間ばかりだと思っていたが、そうでもなさそうだ。」

「まあ、そうなんですか。」母は不思議そうに返す。

私は隣で黙って聞いていた。

冷たいどころか、あの人は子供に優しく、私に微笑んでくれた。

その記憶が胸の奥で熱を灯す。

すると父がふいに私の肩を叩いた。

「着物を受け取りに行くんだろう。桐島中尉と、また会えるといいな。」

「……はい。」
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