明治、一目惚れの軍人に溺愛されて
「邪魔するよ。」

父が声をかけると、女将がにこやかに出迎えてくれた。

「今日は娘の見合いで着る着物を調達にね。」

「まあ、こんなに大きなお嬢さんがいらしたのね。」

女将の視線を受け、私は思わず背筋を伸ばす。

女学校を卒業したばかりの私にとって、見合いの話は遠いようでいて、もう目の前にある現実だった。

女将はすぐに反物の棚から一枚の布を取り出す。

鮮やかな赤色が、ぱっと花のように広がった。

「こちらなど、いかがでしょう。」

「いいね。やっぱり女将の見立ては確かだ。」

父は満足そうに頷いた。

その時だった。

暖簾が揺れ、外から差し込む光とともに、一人の男が店へ入ってきた。

軍服を身にまとい、真っ直ぐに歩いてくる姿は、店の空気を一変させるほど凛々しくて。

思わず息を呑んだ。

胸の奥が熱くなり、視線を外すことができなかった。
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