明治、一目惚れの軍人に溺愛されて
すると、店の奥から呉服屋の旦那さんが出てきて、その軍服姿の青年に声をかけた。

「着物を一枚、新調したい。」

「はいよ、どうぞこちらへ。」

青年は案内されるまま、なんと私のすぐ隣に腰を下ろした。

紺色の軍服が驚くほど似合っていて、思わず目を奪われる。

視線を逸らそうとした瞬間、ふと彼と目が合った。

一瞬の沈黙のあと、互いに小さく微笑む。

ただそれだけで、胸の奥が熱くなるのを感じた。

「桐島様、こちらの色はどうでしょう。」

旦那さんが広げたのは、落ち着いた灰色の布地だった。

「うん。大人っぽいね。」

低く澄んだ声が耳に心地よく響く。

「気に入って頂いて嬉しいです。」

旦那さんが満足げにうなずく。

私は――ただ、その声が気に入ってしまった。

理由もなく、ただ耳に残り、心が惹き寄せられる。
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