明治、一目惚れの軍人に溺愛されて
「少しでも長く、雪乃に会いたいんだ。」

真剣な眼差しに、心臓が破裂しそうになる。

こんなにも真っ直ぐに想いをぶつけられたことは、今まで一度もなかった。

「ね。いいね。」

桐島中尉はそう言い残し、背を向けて歩き出した。

その姿が遠ざかっていくのを見送りながら、私はしばし立ち尽くしていた。

胸の奥がじんわりと熱い。

――心どころか、唇まで奪っていった。

触れたばかりの熱が、まだ残っている。

思い出すたびに、頬がまた赤くなってしまう。

これが夢でないのなら、私はもう後戻りできない。

彼の声、眼差し、そして強引なほどの優しさ。

そのすべてが胸を締めつけるようで、苦しいのに、どうしようもなく幸せだった。

「……桐島中尉。」

名前を小さく口にする。

それだけで胸がいっぱいになり、自然と笑みがこぼれる。

いつもは静かな帰り道が、今日はまるで違って見えた。

夕暮れに染まる空さえ、彼に奪われた唇の熱を祝福しているようだった。
< 45 / 120 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop