明治、一目惚れの軍人に溺愛されて
軍人らしい鋭さではなく、恋人らしい柔らかな声。

「だ、だって……」

必死に言い返そうとするけれど、言葉にならない。

握られた手に力がこもり、鼓動が速くなる。

――もう、この人の言葉一つで、私はこんなにも揺さぶられてしまうのだ。

視線を合わせる勇気はなかった。

それでも横にいる彼の笑みが、はっきりと感じられた。

そして家の前に辿り着いた。

「ありがとうございます。送ってくださって。」

深く頭を下げると、桐島中尉はにこやかに笑った。

「恋人なんだから、当然だよ。」

その言葉に、胸の奥が甘く震える。

優しい笑顔が、春の日差しのように私を包み込んだ。

「では、来週。」

彼がそう告げて一歩離れたかと思うと、ふいに続けた。

「迎えにこようか。」

「えっ?」

思わず声が裏返る。

令嬢である自分の家に、軍人の恋人が迎えに来るなんて――想像もしなかった。
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