明治、一目惚れの軍人に溺愛されて
「申し訳ない。」

志郎さんは素直に頭を下げた。

女将さんは意味ありげに笑みを残し、部屋を後にする。

襖が閉まる音がして、静寂が戻った。

けれど――私には、もう笑う気力など残っていなかった。

「雪乃……?」

志郎さんが心配そうに覗き込む。

その優しい瞳を直視することができない。

耳の奥には、先ほどの女将さんの言葉がこだましていた。

――桐島中尉、縁談が上がっているのよ。

体の奥が冷たくなり、唇が震えた。

こんなにも愛されているはずなのに、私の知らないところで彼の未来が決められていくのだろうか。

私は視線を伏せ、膝の上で拳を握りしめた。

声にならない嗚咽が胸を締めつける。
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