この恋を運命にするために

一輪目



 私は自分の直感というものを大切にしている。
 根拠はなくてもビビッときたなら、その第六感を信じて進む。

 華道もそう、たとえセオリーを無視することになったとしてもいけると思ったら突き進みたい。

 恋愛もそうだった。


「私と結婚してください」


 たとえ今日会ったばかりの人だとしても、私の直感が告げているのだ。
 運命の人はこの人なのだ、と。


「結婚って、今日会ったばかりなのに?」
「はい。会ったばかりでも、です」
「んー。私があなたを助けたのは刑事として当然のことですよ?」
「そういうことじゃないです! あなたがいいって思ったんです!」


 私は過去の恋愛も一目惚れというか、直感惚れが多い。
 そして好きだ! と思ったらいてもたってもいられなくなってしまう。

 恋の駆け引きなんてできなくて、いつでも直球勝負。
 だからこれまでフラれた経験は少なくない、むしろフラれてばっかりだ。


「あなたが好きです」


 彼の目を真っ直ぐに見ていった。
 大抵の人の反応は訝しげな視線を返されるか、かなり戸惑ったように苦笑いされるか、唐突すぎて引かれたのかそそくさと逃げ去る者もいた。

 だけどこの人は、私から視線を逸らさずに柔らかく微笑む。


「はは、光栄だなぁ」
「! じゃあ!」
「でも、ごめんなさい。私があなたのことを好きになることはないと思います」


 にこやかな笑顔に似つかわしくない辛辣な言葉をかけられているのに、私の心は震えていた。
 むしろ絶対にこの人だ、この人が私の運命の人なのだと確信していた。

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