この恋を運命にするために
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私の名前は千寿蘭、二十四歳。
華道の名門、千寿華道流の娘で私も華道家の端くれとして活動させてもらっている。
父の紅明は現家元、三歳上の兄・紅真が次期家元だ。
次期家元は早々に兄と決まっていたため、私は気楽に楽しくのびのびと花を生ける日々を送っている。
元々家元には興味がない。
私は私の思うがままに、花を生けたい。
伝統ばかりにとらわれず、どんどん新しいことに挑戦していきたい。
父は兄には厳しかったが、私に対してうるさく言うことはなかったので有難く好き勝手させてもらっていた。
ある日、次の展覧会でメインとなる花を任せてもらえることになる。
一番大きくて広い場所に飾ってもらえるのは初めてのことだったので、私は人一倍気合いが入っていた。
念入りに花を選び、花瓶にもこだわった。
悩みに悩み抜いたが、自分の名前でもある蘭の花を中心とした作品にすることに決めた。
だけど展覧会の一週間前、ある事件が起こる。
展覧会で使用する花瓶の一つが紛失してしまったのだ。
その花瓶は億はくだらない一級品の花瓶であり、その価値を狙って盗まれた可能性も考えて警察に届出をした。
警察が捜査にあたり、なんと私が使用している控室のロッカーから花瓶が発見された。