この恋を運命にするために
横浜でのデートで俺は、彼女にフラれるつもりでいた。
フるのではない、フラれるのだ。
きっと本当の俺を知ったら彼女は幻滅するに違いない。
それでいい、現実を突きつけてあげようと思った。
「まずはランチですよね。何を食べますか?」
「行きつけの中華料理屋がありますが」
「信士さんのおすすめですか! 行ってみたいです!」
「わかりました」
子どもの頃からよく行く中華料理店は、ミシュラン一つ星を獲得する程の名店だ。
シェフと父が旧知の中で俺も普段からお世話になっていた。
蘭さんは今まで出会ってきた良家の令嬢とは違い、気さくな女性だが彼女もお嬢様育ちであることには変わりない。
安いランチなど食べ慣れていないだろうと思い、この店に連れて来た。
その結果、シェフにいらぬ誤解をされるハメになったのは失敗だった。
「…………」
蘭さん、さっきからずっと黙ってるな。
もしかして中華はあまり好きじゃなかったのか?
横浜を選ぶくらいだから当たり前に好きなものだと思っていたが――。
「お口に合いませんか?」
「いえ! あまりの美味しさにびっくりしてしまって」
何だか意外な反応だな。
蘭さんならこのレベルの料理は当たり前に食べ慣れているものだと思った。
「ん〜っ! これも美味しすぎる!」
それからは料理を口に入れる度、ハムスターのような顔をしていた。
あまりにも無邪気でかわいすぎる。