この恋を運命にするために


 結局捜査が終わり、その他の書類仕事を片付けていたら本庁を出たのは二十一時過ぎ。
 携帯を見ると、不在着信が入っていた。蘭ちゃんからだ。


「折り返してくれてたのか」


 再度かけ直してみると、今度は繋がった。


「もしもし」
《もしもし、信士くん!?》


 久々に聞く彼女の元気そうな声に、何だかホッと心が落ち着く。


「ごめん、着信に気づかなくて」
《ううん。信士くん、今どこなの?》
「今本庁を出たところだけど」
《ほんとに? あっ、いた!》


 何だか近いところで声がしたと思ったら、目の前に手を振る蘭ちゃんの姿があった。


「よかったぁ」
「えっ……なんで?」
「来ちゃった」


 そういってはにかむ蘭ちゃんはかわいかったが、そんなことを言っている場合ではない。


「女性が一人でこんな時間まで彷徨いてたら危ないだろう!」
「! ずっとウロウロしてたわけじゃないよ? たまたま近くに寄る用事があったから、近くのレストランで夕食を食べてたの。そろそろ帰ろうと思ったら信士くんから電話があったから」
「随分遅くまでいたんだね?」
「……閉店まで粘ってました」
「あのねぇ……」


 どこにいようが、こんなに遅くまで女性が一人でいるのは危ないに決まっている。
 俺が既に帰っていたらどうするつもりだったんだ。


「何してるの? 店にいたって危ないことには変わりないだろう?」
「ごめんなさい。どうしても信士くんに会いたくて……」


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