この恋を運命にするために
キャリアは昇進早くていいよなぁ、なんてぼやきながら野垣は煙草を吹かす。
「野垣は最近どうなんだ?」
「世田谷の女性殺し、ようやくカタがついたとこ」
「それはお疲れ様だな」
「ホシは元交際相手だったよ。愛情のもつれってやつ?」
「ふうん……」
「まあ事情聴取はこれからなんだけどな」
そういえば、展覧会に行った時蘭ちゃんは軽薄そうな男に絡まれていた。
あれからまた何も言われてないといいが――って俺は何を気にしているんだ。
「それじゃあな。今度飲みにでも行こうぜ」
「ああ」
吸い殻を捨て、野垣と別れて戻った。
ストーカー被害というものは多い。
相談件数は増えていると聞くし、最悪なケースもある。
「……やっぱり一度連絡しておくか」
野垣の話を聞いた直後に嫌なことを思い出してしまったせいで、余計に気になってしまった。
改めてお詫びの連絡はしたいと思っていたし、それとなく聞いて別に何もなければそれでいい。
何の言い訳をしているのかわからなかったが、とりあえず電話をかけてみた。
「留守電か」
留守電のメッセージを入れる程でもないし、後で折り返せばいいか。
「おい信士! 早く来い!」
「! はい」
しかしその後受けた詐欺の通報により、蘭ちゃんに連絡する暇などなく夜が更けていった。