この恋を運命にするために
突然の無茶ぶりに困惑した表情をしているのが、顔を見なくてもわかるので面白い。
「信士くんってSすぎない?」
「よく言われる。そういう蘭ちゃんはMって言われない?」
「言われません〜」
緊張していた空気が次第に和らいでいく。
「今日は何してたの?」
「今日は子どもの生け花教室で教えてきたの」
「へぇ、楽しそう」
「楽しいよ! 子どもの自由な発想ってすごく面白いの! 私も勉強になることが多いのよ」
子どもの話だからか、生け花の話だからか、あるいは両方なのか声が楽しそうに弾む。
「子ども好きなんだ?」
「好きよ。信士くんも子ども好きよね?」
「嫌いじゃないかな」
「いや、水族館での迷子の対応、あれは子どもめっちゃ好きでしょ」
「……まあ」
「めちゃくちゃ優しい顔してたもん」
なんだろう、これ。
指摘されるとすごく気恥ずかしいな……。
「……別に」
「あ、照れてる?」
「照れてない」
「照れてるんだ!」
ニヤニヤしてるのが腹立つな。
蘭ちゃんのくせにからかうなんて生意気。
「うふふ」
「何笑ってんの?」
「信士くん、すごくいいパパになりそうね!」
無邪気に笑った後、すぐにハッとして口元を押さえる。
「あっ……今のは、特に深い意味はないので」
「ふっ、わかってるよ」